肥満症について
肥満症は、単に体重が重い状態を指す「肥満」とは異なり、医学的治療が必要な状態です。身長と体重から算出されるBMI(Body Mass Index)という指数を用いて評価を行い、健康被害の有無によって診断されます。
BMIが25kg/m2以上の場合を肥満と呼びますが、その中でも健康被害があるか内臓脂肪の蓄積がある状態を肥満症と定義します。BMIが22kg/m2となる数値が標準体重とされており、最も病気になりにくい指標とされています。
肥満症の診断基準と健康被害
肥満症と診断される基準の一つに、以下の健康被害のいずれかを合併していることが挙げられます。
- 耐糖能障害(2型糖尿病・耐糖能異常など)
- 脂質異常症
- 高血圧
- 高尿酸血症・痛風
- 冠動脈疾患
- 脳梗塞・一過性脳虚血性発作
- 非アルコール性脂肪性肝疾患
- 月経異常・女性不妊
- 睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群
- 運動器疾患(変形性関節症、変形性脊椎症)
- 肥満関連腎臓病
また、腹囲が男性85cm以上、女性90cm以上の場合に内臓脂肪の蓄積が疑われます。確定診断には腹部CT検査が用いられ、内臓脂肪面積が100cm2以上であるかを確認します。

なお、一般的な肥満は原発性肥満と呼ばれます。一方で、甲状腺機能低下症や薬物の副作用などが原因で起こる肥満は二次性肥満として区別され、根本的な原因への対処が必要です。
肥満症を引き起こす主な原因
食生活とエネルギーバランス
日々のわずかなエネルギーバランスの崩れが積み重なり、体重増加を招きます。特定の栄養素を制限するよりも、高蛋白食を摂取することが長期的な体重維持に有効であるという報告があります。また、赤身肉を控えて野菜や果物を中心とする地中海式の食事パターンは、高い減量効果が期待できます。早食いは満腹感を得る前に過剰摂取を招くため注意が必要です。
アルコールの影響
飲酒による肥満への影響は、特に男性で顕著です。これは飲酒量そのものに加え、一緒に摂取するおつまみのエネルギー量が多いためと考えられています。女性の場合も、飲酒量が増えるほど体重増加のリスクが高まるため、適量を心がけることが重要です。
日々の運動量と活動量
まとまった運動だけでなく、家事や仕事の合間に動くちょこまか運動(非運動性熱産生)が非常に有効です。仕事中に座りっぱなしでいることは、たとえ定期的に運動をしていても肥満のリスクを高めます。当院では、徒歩通勤やこまめに立ち上がるなど、日常生活の中での活動量向上を推奨しています。
睡眠時間とホルモンの関係
睡眠不足(6時間未満)は、食欲を高めるホルモンの影響で摂取カロリーの増加を招きます。また、加齢に伴う性ホルモン(エストロゲンやアンドロゲン)の減少も、内臓脂肪の蓄積や筋肉量の低下に関係しており、肥満の要因となります。
肥満症の合併症と治療の目的
肥満症は、全身にわたる多様な疾患の原因となります。特に当院では睡眠時無呼吸症候群の患者様が多く、減量によって症状が劇的に改善するケースも少なくありません。

肥満症治療の真の目的は、単に数値を減らすことではなく、その先にある健康障害の治療や予防にあります。わずか3%の減量であっても、健康状態には大きな改善が見られることがわかっています。

肥満症の具体的な治療方法

食事療法と運動療法の基本
治療の根幹は食事療法です。摂取エネルギーを消費エネルギーより抑える必要があります。年齢に応じた目標BMIの目安は以下の通りです。
| 65歳未満 | 22 kg/m2 |
|---|---|
| 65歳以上 | 22以上25 kg/m2未満 |
運動療法では、有酸素運動(速歩など)を1日合計30分以上、または週に150分以上実施することが推奨されます。身体活動を増やすことは、体重減少だけでなく心血管疾患の発症リスク低下にも直結します。
高度肥満症への薬物療法
食事・運動療法を3〜6ヶ月継続しても十分な効果が得られない場合、薬物療法を検討します。近年、GLP-1受容体作動薬や、さらに効果の高いGIP/GLP-1受容体作動薬が登場し、注目を集めています。
これらの薬剤は、食欲を抑えるとともに、脂肪代謝を促すことで強力な減量効果を発揮します。例えば、チルゼパチド(ゼップバウンド)は、これまでの薬剤と比較しても非常に高い体重減少効果が報告されています。


また、睡眠時無呼吸症候群の患者様を対象とした研究では、体重が約20%減少したことで、無呼吸の指標が劇的に改善し、CPAP治療が不要なレベルまで回復した例も報告されています(Malhotra A, et al. N Engl J Med. 2024)。

保険診療の適応基準と副作用について
肥満症治療薬ゼップバウンドの保険診療には、以下の基準が設けられています。また施設基準が厳しいため限られた施設でないと保険で診察を受けることができません(近隣では広島赤十字・原爆病院で該当施設です)。
- BMIが35kg/m2以上かつ、高血圧、脂質異常症、2型糖尿病のいずれかを合併している
- BMIが27kg/m2以上かつ、指定された12の健康障害のうち2つ以上を合併している
- 半年間の栄養指導を受けた上での処方
また、使用にあたっては副作用の理解が必要です。主な副作用は以下の通りです。
| 吐き気 | 13.7% |
|---|---|
| 便秘 | 13.7% |
| 食欲減退 | 12.3% |
| 下痢 | 8.2% |
| 腹部不快感 | 6.8% |
重篤な胃腸障害や膵炎の既往がある方、妊娠中・授乳中の方は投与を避ける必要があります。医師の指導のもと、適切な治療計画を立てることが大切です。
当院での自費診療について
当院でのゼップバウンドの処方は自費になります。詳しくはこちら。

