先日当院通院中のてんかんをお持ちの患者さんから新型コロナワクチン接種について相談を受けました。

同様の相談や疑問は静岡てんかんセンターの同門の中でも議論されておりました。

その中で参考となる文献を教えてもらったので取り急ぎ解説いたします。

 

Wredeさんというドイツのボン大学病院のグループが書いて6月6日にEpilepsy & Behavior誌が掲載を許可したもので

「COVID-19 vaccination in patients with epilepsy: First experiences in a German tertiary epilepsy center」

という題名です。

2021年の3月19日から4月20日にボン大学病院のてんかん科を受診した435名の患者さんのうち

ワクチン接種を受けた方でコンタクトのとれた54名を対象としています。

使ったワクチンは、ファイザー/バイオテック社製が26名、モデルナが8名、アストラゼネカが18名でした（不明2名）。

ワクチン接種をうけた54名のうち18名（33%）が、頭痛や疲労感、発熱、胃腸症状などの一般的な副作用を呈しました。

てんかんに関連した副作用としては、一名が接種翌日に発作（意識減損焦点発作）をおこしましたが、発作頻度はいつもと同じだったそうです。

また接種4日後に新しい発作のタイプがみられた方が1名いらっしゃいました。

てんかん重積を起こした方はいませんでした。

 

以上からこの論文の著者らは、てんかんをお持ちで新型コロナウイルスワクチンの予防接種をうけた方では大きな問題が起きておらず

ワクチン接種の推奨をサポートする結果だ、と結論づけています。

よって一般的にはてんかん患者さんへの接種は問題ないと私も考えますが、最終的には患者さん個人個人の状態をみての判断になると思います。

たとえば、いつも発熱をすると重積発作を起こす方の場合は接種をするかどうかは悩ましいですが

そうでもない方は過度に恐れて接種をさける必要はないと思います。

できれば接種翌日はあらかじめ休みにしておいて仕事に支障を来さないようにするなどの手をうっておくことは良いことだと思いますし

それはてんかん患者さん以外にもあてはまることとではないでしょうか。

お悩みの方はどうぞご相談下さいませ。