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院長ブログ

関西電力病院睡眠カンファ#3(2021.05.01更新)

2020年12月

関西電力病院Web睡眠カンファレンス

テーマはHypersomnia(過眠症)でした。過眠症の代表はナルコレプシーという病気で、意図せず眠ってしまう病気です。1877年に初めて論文に記述がされました。情動脱力発作(カタプレキシー)という、笑ったり面白いことを言おうとするなど感情が動いたときに力が抜けてしまう症状があり、カタプレキシーをともなうタイプをナルコレプシー1型、伴わないタイプを2型といいます。小児では情動に関係なく舌が落ち込んだり口が空いたりと大人と様子が異なります。眠気のため学業に支障を来したり仕事を辞めさせられたりするケースがあり、私の診療経験では、大学時代は授業中寝ていてもなんとか卒業できたが、社会人になった途端研修や重要な会議中に眠ったりして問題が表面化するパターンをよくみてきました。典型的な例では薬剤で眠気が和らぐことや、眠っては危険な仕事は避けるなどの職業選択にもかかわるため、早期の診断と治療が望ましい疾患です。2000年にナルコレプシー1型はオレキシンという覚醒にかかわる物質の欠乏が関連している場合が多い(93%)ことが明らかになりました。

診断には、まず夜に終夜睡眠ポリグラフィ(PSG)を行います。夢を見るとされるREM睡眠期は健常者では入眠後60-90分後におとずれますが、ナルコレプシー患者さんでは入眠して20分かからず出現することがあります(SOREMPs)。また中途覚醒が多く確認されることがあり、昼間寝てしまうからといって睡眠時間が多い病気というわけではありません。

PSGを行った翌日朝から睡眠潜時反復測定検査(MSLT)という昼寝を日中に2時間毎に4-5回繰り返す検査を行います。健常者では通常眠るまでの時間が長くなるか眠れなくなってきますが、ナルコレプシーの場合は平均で8分かからず眠ってしまいます。この検査は診断および治療の導入に不可欠なもので、オレキシンが欠乏した患者の91%で異常と判定できますが、疑陽性の問題や検査結果の再現性が低いのではという指摘もあります。完全な検査とまでは言えないものの、それでもMSLTで平均睡眠潜時が8分以下かつSOREMPs(15分以内)が2回以上認められれば感度93.5%、特異度97.8%という精度で診断できるとされるため、睡眠時間不足などがない状態できちっと行なう事が診断に有効です。

ナルコレプシーの有病率は約0.02%と低いですが、力が抜けるのや眠いことが体質だと思っていたり一過性脳虚血性発作などと間違えられていたりする場合があり、実際はもっと多いかもしれないと言っている研究者もいます。ナルコレプシーを発症して2年間はカタプレキシーはなくても、オレキシンが低下している場合は30年間で50%がカタプレキシーを来すことが報告されました。ある種のHLA(白血球の血液型)が関係しているなど遺伝との関係が示唆されますが、ナルコレプシー2型では15%の人しかオレキシンは欠乏しておらず、類縁疾患の特発性過眠症とともに原因ははっきりと解明はされていません。

治療ですが、欧米と異なり日本では使用できる薬剤が非常に限定されています。その為というわけではありませんが、計画的な午睡(ナルコレプシーは昼寝をすることで眠気を抑えやすいです)や規則正しい生活をして睡眠時間不足に陥らないなどという、基本的なことを守ることがとても重要です。睡眠時無呼吸症候群があればその治療も考えなければなりませんし、トータルに睡眠を評価できる医療者のもとでまずはしっかりとした鑑別を受けることが重要でしょう。

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