CPAP機器のご紹介と睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療法
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療は、重症度や原因に応じて最適な方法を選択することが重要です。当院では患者様のライフスタイルや症状に合わせ、専門的な視点から治療計画をご提案いたします。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療選択肢
SASガイドライン2020に基づき、症状の程度に合わせて適切な治療法を選択します。治療の第一選択はCPAP(シーパップ)ですが、適応条件に満たない場合はマウスピースなどの他の方法を検討します。
| CPAPの適応 | REIが30回/時間以上、またはAHIが15回/時間以上の場合 |
|---|---|
| マウスピース・体位療法 | AHIが5回/時間以上 15回/時間未満の場合 |
| 正常範囲 | AHIが5回/時間未満の場合 |
外科的治療については、侵襲性が高いことや効果に個人差があるため、他の治療が困難な場合に検討されます。また、肥満が原因の場合は減量による改善が強く期待できるため、並行して生活習慣の改善を指導いたします。
当院でも減量指導を行っていますが、高度な肥満がある場合は専門の肥満外来(広島赤十字・原爆病院など)へのご紹介も可能です。
CPAP(持続陽圧呼吸療法)の仕組み
CPAPは、鼻から空気を送り込むことで上気道の陰圧化を防ぎ、気道の閉塞を防止する治療法です。欧米とは異なり、日本では医療機関を通じて機器をレンタルするため、高額な購入費用をかけずに開始できるというメリットがあります。

快適な睡眠を支える圧力設定とサポート機能
送り込まれる空気の圧力は、最低4cmH2Oから調整されます。患者様の呼吸状態に合わせて最適なモードを選択します。
| 自動圧モード | 機器が呼吸イベントを感知し、最初は4~8cmH2O程度の幅で圧を調整します。 |
|---|---|
| 固定圧モード | 一定の圧力を維持します。高い圧が必要な方に用いられることがあります。 |
| 呼気リリーフ機能 | 息を吐く時に緩やかに圧を下げる機能で、吐きにくさによる不快感を軽減します。 |
| プレッシャーサポート | 吸気と呼気に差圧をつける高度な機能で、重症の方でも楽に呼吸が可能です。 |
当院で取り扱っている主なCPAP機器
各メーカーの機器には異なる特性があります。当院では患者様のニーズに合わせた機種選定を行っています。
ドリームステーション(Philips社)
世界的なメーカーで、圧力変化が穏やかなのが特徴です。初めてCPAPを導入する方にも馴染みやすく、プレッシャーサポート機能により高い圧が必要な方でも継続しやすい設計です。加湿ユニットの着脱が可能で、リモート設定変更にも対応しています。


Sleep Style Rx(F&P社)
加湿性能と操作性に優れた機種です。ボタンが大きく見やすいため、高齢の方でも迷わず操作できます。内蔵された加湿ユニットはお手入れが簡単で、鼻の乾燥が気になる方に最適です。締め付け感の少ないマスクも選択可能です。


ムラタCPAP MX(村田製作所)
国産の小型・軽量モデルです。本体が非常にコンパクトで、出張や旅行など持ち運びの機会が多い方におすすめです。設定変更には本体またはチップの持参が必要となりますので、受診時には忘れずにご用意ください。


Air Sense 11 レスポンド(ResMed社)
こちらも世界的なメーカーで迅速な圧力上昇が得意であり、体格の大きな方の治療に適しています。旧来より定評のあるシリーズの最新機種であり、当院でも多くの患者様が利用されています。

レスメドAirMini(ResMed社)
コンパクトな携帯用CPAPです。水を使わずに加湿できる特殊なシステムを搭載しています。スマートフォンアプリとの連携が必須で、紐付けがないと使用データを確認できず、治療継続ができません。
装着感に合わせたマスクの種類
治療の継続には、自分に合ったマスク選びが欠かせません。
鼻マスク(主流)
鼻を覆うスタンダードなタイプで、固定力が高く漏れにくいのが特徴です。額と顎のバンドでしっかり固定します。
ピローマスク(開放感重視)
鼻の穴に柔らかい突起を挿入するタイプや当てるだけのものもあります。圧迫感が非常に少ないため、鼻マスクで窮屈さを感じる方に適しています。
フルフェイスマスク(口呼吸対策)
鼻と口の両方を覆います。口から空気が漏れてしまう場合に検討しますが、継続はかなり難しく、できる限り口テープなどを併用した鼻呼吸の練習を推奨しています。
CPAP療法の副作用と適切な対処法
不快な症状が出た場合も、設定や工夫次第で解消できることがほとんどです。
| 鼻の乾燥・鼻血 | 加湿器の使用が有効です。タンクの水は毎日入れ替え、清潔を保ちましょう。 |
|---|---|
| エアーリーク(空気漏れ) | 装着位置を調整します。受診時のデータ解析で漏れの有無を確認し、改善策をご提案します。 |
| 呑気症(お腹の張り) | 空気が胃に入ってしまう場合は、設定圧を下げることで症状が緩和されます。 |
下の図は院長が使用しているCPAPのリーク波形です。きちんと装着出来ていれば上図のようにリークはほとんどありませんが、寝返りなどで漏れると下図のようになります。
マウスピース(歯科装具)による治療
下顎を前方に固定し、気道の塞がりを防ぐ方法です。主に軽症の方が対象ですが、CPAPの継続が困難な場合にも選択されます。持ち運びが容易で、CPAPと併用することで鼻呼吸を促すメリットもあります。副作用として顎関節の痛みや歯の違和感が生じることがあるため、歯科専門医との連携が必要です。
根本的な改善を目指す減量と肥満治療
肥満を伴うSASの場合、体重を落とすことが最も効果的な治療になります。研究では、BMIが10%減少するとAHIは約36%低下すると報告されています(Malhotra A, et al. Sleep Med. 2024)。
近年では、肥満症治療薬であるチルゼパチド(ゼップバウンド)が、中等症以上のSASを合併するBMI≧27 kg/㎡の肥満の方に保険適用となりました。体重の約20%減少に伴い、約半数の方がCPAP不要なレベルまで改善したというデータもあります(Malhotra A, et al. N Engl J Med.. 2024)。
保険で投与できる施設は限られており、CPAPが十分に使用できない場合や薬剤での減量が望ましい場合などに広島赤十字・原爆病院に紹介しています。
当院では自費になりますが、適応を満たした方にゼップバウンドを投与可能です。オンライン栄養指導は保険で受けて頂けます。
肥満から始まる「メタボリックドミノ」を食い止めるためにも、積極的な減量に取り組んでいきましょう。
メタボリックドミノの図(伊藤裕 日内会誌. 2018より引用)
お気軽にご相談ください
睡眠時無呼吸症候群は、適切な治療を行うことで日中のパフォーマンスや生活の質の改善を図りつつ心臓や脳の病気の発症を予防していく病気です。
「ただのいびきかも」「わざわざ受診するほどではないかも」と迷う前に、まずは一度当院にご相談ください。火曜、木曜18時~19時30分まで、完全予約制のSAS専門夜間診療枠を設けています。オンライン診療も可能です。
*Webからのご予約は「睡眠時無呼吸症候群(SAS)外来」を選択してください
さらに詳しい専門的な情報を知りたい方へ
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は高血圧、糖尿病、心筋梗塞、脳卒中を発卒させるおそれがあるだけでなく、さまざまな睡眠障害や体調不良を引き起こします。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)については院長が詳しく解説しておりますので、ぜひ下記ページもご覧ください。

