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てんかんと睡眠時無呼吸症候群の合併について

[2021.07.19]

 近年、てんかんと睡眠時無呼吸症候群(SAS)との合併が注目されてきています。

 私は、昨年11月に開かれた第50回日本臨床神経生理学会学術大会(京都国際会議場)のアドバンスセミナーで、「てんかんと睡眠関連疾患」という題名でお話させて頂きました。そこでSASとてんかんとの関連を話したのですが、ここであらためて説明いたします。

 てんかん患者さんは他の神経疾患より眠気が強く、特にSASやレストレスレッグズ症候群(むずむず脚症候群)の合併があると日中の過度の眠気を来しやすいと言われています。薬や発作頻度、てんかんのタイプとの関係は見られませんでした。

 成人てんかん患者さん全体では10-35%にSASの合併がみられ、難治性てんかん患者さんにおいては軽症SASは88%に上り、積極的な治療が必要な中等症のSASも15-26.5%にみられます(Malow, Sleep. 1997, Malow, Neurology. 2008)。

 そこで、中等度のSASを合併した難治性てんかん患者さんにCPAP(持続陽圧呼吸療法)で治療をしたら発作頻度が減るかを検討した論文が2008年に発表されました(Malow, Neurology. 2008)。対象は18歳以上のSASを合併しているてんかん患者さん(CPAP使用群23名、Sham装置使用群13名)で、治療前の無呼吸低呼吸指数(AHI:正常は5回未満)は平均16.1回/時間でした。この論文では、CPAPを使用したところAHIは平均3.1回/時間(正常化)に低下したものの、発作頻度は有意に低下しなかったという結果でした。

 しかしながら、この論文の結果を解釈する時に気をつけないといけないポイントがあります。それはCPAPをきちんと使用できていたのかというところです。生活習慣病合併例に対する様々な論文から、CPAPは1日平均4時間以上、月あたりの使用率が70%以上(30日間で21日以上)で使わないと効果が不十分であることが分かっています。そういう視点でこの論文を見てみると、平均使用時間4.7時間、平均月間使用率66%であり、使用状況が十分でなかった可能性が疑われました。

 その後2011年に、きちんとCPAPを使用したてんかん患者さん(4時間以上かつ月間70%以上)28名と、きちんと使わなかった方13人を比べた論文が発表され、前者で発作頻度が減ることが明らかになりました(Vendrame, Epilepsia. 2011)。

 2014年にはてんかん患者さん132名を、CPAP使用SAS群43名、CPAP非使用SAS群33名、SASなし56名にわけて、CPAPの効果を見た論文も発表されました。これもしっかりCPAPを使うと、73.9%の方で発作が減少し、発作頻度も平均58.5%減少する(CPAP非使用群では17%増えた)という結果で、SASを合併しているてんかん患者さんはCPAP使用にて発作減少が期待できるという結果でした(Pornsriniyom, Epilepsy Behav. 2014)。

 未治療のSASがあると苦しさ等で夜間に覚醒を繰り返すことから睡眠時間不足につながるおそれがあり、それだけでもてんかん発作をおこしやすくなると考えられます。

従いまして、てんかん患者さんの診療においてはSASの合併の有無も頭に入れて診察をし、特になかなか発作がおさまらない患者さんには積極的に調べてみることが重要ではないかと考えます。

またCPAPを導入しても、きちんと使用しているかどうかを医療者側が確認することも大事です。

1日4時間以上、月に21日以上使えていないければ、どこに問題があるのかを探って対処する必要がありますので、てんかんも睡眠も両方診療できる医療機関が望ましいと思います。

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