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関西電力病院睡眠カンファ#5上気道

[2021.07.06]

2021年5月は上気道について学びました。

プレゼンターは関電病院睡眠センターの耳鼻科の先生です。

上気道は箱に例えられるそうです。箱の形がその人の顔面形態で、その中に軟部組織がありそこを空気が通っていくというイメージです。

咽頭外側壁、軟口蓋、舌の3つが構成要素で、これらが大きいほどSASを起こしやすいといわれています。そのことを(上気道の)解剖学的不均衡といいます。

 

それではまず、一番上の鼻から機能をみていきます。

元々閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)がない人の鼻を人工的に閉塞させるとどうなるでしょうか。

睡眠が分断され、睡眠呼吸障害が生じやすくなり、徐波睡眠(深い睡眠)が減少してしまいます。

アレルギー性鼻炎がある人はそうでない人に比べ1.8倍睡眠呼吸障害を引き起こしやすいそうです。

鼻閉→開口→上気道の抵抗性上昇→咽頭内腔の狭窄、舌根部の直径の減少、軟口蓋の振動の増加というメカニズムです。

OSAの方の鼻閉の原因として、鼻中隔湾曲症、鼻茸、鼻甲介の拡大があげられています。

鼻の容積の減少がPAPアドヒアレンスの低下を引き起こす(CPAP機器を十分な時間使えなくなる)と考えられ、鼻に問題のある方は鼻の手術がPAPの忍容性や圧を改善させるかもしれないとされています。

 

続いて口腔内についてですが、診察室ではMallampati分類を用いて喉の奥が狭くないかを確認しています。

顎が小さかったり後退している方もOSAになりやすいです。

また、他にOSAになりやすい特徴は以下のように挙げられます。

・顔:短頭、平坦な頬、広顔、オトガイ唇溝が目立つ、広い頬骨間の距離、上顎後退、下顎後退

・歯:歯の叢生、アーチが狭い、上顎弓の狭小がある(歯の叢生、小臼歯を抜いたことがある、後交叉咬合(歯をかみ合わせたときに、上下の歯列がどこかで交差して上の歯列よりも下の歯列が外側に出ている咬み合わせのこと)がある)

・口腔:骨過剰(上顎、下顎)

・舌:舌の幅が広い、歯痕があるなど

 

更に扁桃腺に関しては、大きさを0度(扁桃腺術後)~4度(扁桃腺同士がくっつく)までで分類して評価をします。

小児についてですが、扁桃腺の生理的肥大は4歳-5歳くらいにみられ、6歳まではAHI(無呼吸低呼吸指数)があまり高くなければモンテルカストなどで経過をみることも多いそうです。無治療でも40%が治癒するといわれています。扁桃腺を切除した平均6.5歳、1721名の小児を解析した論文では、ほとんどがOSAが改善したそうですが(Fiedman OHNS 2006)、それでも、肥満および神経・発達・頭部顔面に異常がある子はOSAが残存してしまうリスクが高いようです(Imanguli, Laryngoscop 2016)。

成人については、18人の比較で手術をした78%に効果があり、AHIが平均31.57から8.12に減少し、ESS(眠気の強さをみるスコア。一概には言えないが10点を超えると眠気が強いと考えられている)も10.94から5に減ったとされます(Smith, Otolaryngol Head Neck Surg 2017)。ただバイアスの問題や日本での術式の違いもあり実際にこの論文通りかわからないそうです。

退役軍人を対象とした古い論文で、UPPPという手術の方がCPAPより優れていたというものがありましたが、まだCPAPの性能が低く固定圧しかない時代であり、何より重要なアドヒアランスの情報(4時間以上使った日が月の7割あるのが良い)がないため、あまり信用はできなさそうです。

 

最後に、体位依存性OSA(横向きになると改善する)と非依存性OSA(どの向きでも悪いまま)の違いについてですが、

(Saigusa 2009)体位依存性の人は咽頭外側壁が薄い、(Soga 2009)体位依存性の人では口蓋咽頭弓の幅が広い、(Chung 2010)体位依存性の人はマウスピースの効果がある

という論文が紹介されました。

マウスピースが効くメカニズムとしては、下顎を前に突出させることで舌根部を前に引き出すという理解が一般的ですが、実は

・上気道(上咽頭)の拡大

・咽頭壁の安定

という効果もあり、舌根部だけでなく上咽頭(口蓋帆咽頭)が広がることが大事のようです。

今回も勉強になりましたね。

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