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その他の睡眠関連疾患の診療

過眠症

日中の過度の眠気があり場合、次のように分けて原因を探っていきます。いずれも最初は睡眠日誌(Sleep-wake log)を記載していただき、現実にどのように睡眠をとっておられるか確認します。

a. 睡眠の量の不足:

眠気の原因を調べていくと、スリープヘルスの問題で明らかな睡眠時間不足があったということは少なくありませんが、必要な睡眠時間には個人差があり、7時間眠っても足りない方もいます。また、寝付こうとすると脚がむずむずしてきたり(むずむず脚症候群)、体がぴくついて目が覚めてしまう方もいらっしゃいます。問診やSleep-wake logを元に診断して診療を行います。

b. 睡眠の質の低下:

睡眠時無呼吸症候群の他、睡眠中に脚が勝手に動いて目がさめてしまう周期性四肢運動異常症、睡眠中のてんかん発作などが原因となります。原因に応じて治療を行います。

c. 覚醒の維持の問題:

ナルコレプシーは、Narco(睡眠)+lepsy(発作)という言葉で成り立っていますが、日中起きていないといけないときに寝てしまい、逆に夜はしばしば覚醒してしまう疾患で、過眠症の一つです。笑うと少しまぶたが下がったり、膝の力が軽く抜けるなど、カタプレキシーという症状が見られる場合があります。

授業や実習中に寝てしまって学業を続けられなくなった方、大学は授業中少々眠ってもなんとか卒業できたが新人研修中に寝てしまって問題が顕在化して連れてこられる方などにしばしば出会ってきました。発症年齢は一般的に10代ですが、急に眠たくなることが自分の癖だと考えて50-60代になって受診してこられる方もおられました。薬剤治療にて眠気をコントロールできるようになり、復学を果たした方もおられましたし、無治療では人生を左右してしまう疾患とも言えますので、眠気が強い人を診察する時はこの疾患を念頭においておくことが重要です。

d. サーカディアンリズムの問題

スマホやゲームのやりすぎ、夏休みなどで夜更かしが続くと、通常の時間帯に眠ろうと思っても目が冴えて眠れず、睡眠時間不足になることがあります。これを睡眠相後退症候群(Delayed sleep phase syndrome:DSPS)といい、逆に高齢になって早い時間に眠ってしまい、真夜中に起きてしまって困るものを睡眠相前進症候群(ASPS)と言います。スリープヘルスの指導に加え、適切なタイミングにメラトニン受容体作動薬(ロゼレム)を使っていきます。ロゼレムは時差の治療にも使われます。

神経疾患によるもの

脳血管障害や多発性硬化症などの病気によって、睡眠覚醒に関与する視床・視床下部・脳幹などに病巣ができると眠気を来すことがあります。また、原因は完全には明らかにはなっていませんが、パーキンソン病などの神経疾患も眠気が問題となることがあります。

精神疾患によるもの

うつで眠気を起こすことがあります。強いうつ症状がある方は近隣の心療内科にご紹介いたします。

薬物によるもの

お薬手帳を確認させて頂きます。

レム睡眠行動異常症

夢内容に一致した言動がみられ、激しくなるとベッドパートナーを殴ったり、壁をたたくなどで怪我をする方もいらっしゃいます。60歳以上の4.6-7.7%にみられるとされ、高齢になるにつれてその割合は上昇します。レビー小体病(パーキンソン病、レビー小体型認知症など)の前駆症状として出現することがあり、発症後12年間で73.5%の患者さんがこれらの病気を発症すると言う論文もあります。

この病気の診断には終夜睡眠ポリグラフィ(PSG)が必須となっています。通常は夢を見る睡眠ステージ(REM睡眠期)では脳からの指令により筋肉の緊張が最も低下して、夢を見ても体が動かないようになっているのですが、この病気では筋緊張の低下がみられなくなるため(REM sleep witout atonia: RWA)それをPSGで確認するわけです。2023年1月より院内で一泊して頂いて検査を行う事ができるようになります。体が動いてしまってもクッションなどで怪我をしないように努め、睡眠検査技師がご様子や安全を確認しながら記録を行います。下記に診断基準を示しますが、「夢内容の行動化」である証明が必要なので、ビデオを撮影および夢内容の確認も行います。

治療としましては、症状を和らげる薬を処方しつつ、定期的な診察を通してレビー小体病を発症していないかを確認していきます。発症が疑わしければ広島赤十字・原爆病院での院長の外来枠にて画像検査などを手配して診断に努めます。実際にこのような流れでパーキンソン病の診断がつき治療を開始できた方もいらっしゃいます。

不眠症

当院では、スリープヘルスの問題があれば改善のためのアドバイスを行ったり、他の睡眠関連疾患の合併があればその治療を行うことを通して、なるべく眠剤の量が最小限で済むように努めています。不眠自体は日常の診療でよく遭遇する症状であり、多くの場合これらの方法で対応可能ですが、精神科専門診療が必要な精神疾患(うつ病、発達障害など)や、薬物・アルコール依存が関係していると判断した場合は、それらの診療が可能な医療機関をご紹介いたします。

既に他の精神科・心療内科で診療を受けておられる方が当院の受診を希望される場合は、必ず紹介状を作成してもらって下さい。他の睡眠関連疾患の合併がなければ、ご紹介元にその旨をご報告の上、今後の診療をお願いいたしますのでご承知置き下さい。

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