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頭痛

頭痛の頻度

日本人の頭痛有病率は、片頭痛8.4%、緊張型頭痛22.4%、その他の頭痛8.9%となっており、40%弱の方が頭痛を経験しています(Cephalalgia 1997)。

また、繰り返す頭痛で外来を受診される方のうち84%が片頭痛とされており(Headache Care 2005)、片頭痛で悩まれる方が多いようです。

頭痛は大きく分けて一次性頭痛と二次性頭痛に分けられます。代表的な頭痛である、片頭痛・緊張型頭痛・群発頭痛(三叉神経・自律神経性頭痛)は一次性頭痛です。二次性頭痛はくも膜下出血など何か原因があって生じるもので、新たに生じた頭痛やいつもと違う頭痛の場合は特に注意をする必要があります。二次性頭痛が疑われる場合は、当院と連携している医療機関に頭部CTやMRIを依頼しています。

それでは以下に主に代表的な一次性頭痛について説明をいたします。治療の概要も載せていますが、当院では個人個人に合わせた治療をご提案いたします。

片頭痛

片頭痛は、1.女性に多い、2.10代に発症して30-40歳代が多い、3.家族歴がある、4.発作を繰り返す(月に数回の頻度)、5.症状が重い、といった特徴があります。

頭痛の持続時間には定義があり4-72時間となっていて、典型的には頭の片側が脈を打つように痛みますが、4割の方は両側性に痛みます。症状は重いことが多く寝込んだり嘔吐する場合もあります。

出典:大塚製薬ホームページ

予兆として頭痛の数時間~2日前に、焦燥感、食欲亢進、あくびや疲労感、頚部の凝りが生じることがあり、続いて”前兆のある片頭痛”というタイプの方では90%以上に視覚症状(閃輝暗点と呼ばれるジグザク型の光)が生じます。

片頭痛の原因

1940年頃にはセロトニンが片頭痛の前駆期に放出⇒血管が収縮して前兆が出現⇒セロトニンが代謝され減少すると血管が拡張し片頭痛が出現する、というメカニズムが考えられていました。そこでセロトニン受容体を作動させる目的でエルゴタミンが開発されましたが、アドレナリンやドパミン受容体をも刺激してしまい、めまいや消化器症状といった副作用が問題となりました。次にセロトニン受容体のうち、主に血管収縮作用をもつ5-HT1B受容体と抗炎症作用をもつ5-HT1Dおよび疼痛伝導の抑制に関与する5-HT1Fを作動させるトリプタンが開発されました。ちょうどこの頃(1984年)三叉神経血管説が唱えられ、セロトニンの低下やストレスなどで三叉神経が刺激されることによりCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)などが放出され、血管拡張や神経原性炎症を来した結果頭痛が起こると考えられるようになりました。近年では頭痛のgeneratorとして脳幹や視床下部の関与が考えられています。

出典:大塚製薬ホームページ

片頭痛の治療

治療については急性期治療と予防療法の2つに分けることが出来ます。

急性期治療

急性期治療では、軽度~中等度の頭痛には非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)+制吐薬、中等度~重度の頭痛もしくはNSAIDsが効かない例にはトリプタンが推奨されています。呉茱萸湯という漢方薬も使われます。

NSAIDsのうちロキソプロフェン(ロキソニン)は血中濃度が最高になるまでの時間が30分と最も短いためよく用いられています。またナプロキセン(ナイキサン)は半減期が14時間と長いため、持続時間の長い頭痛に使用を考慮されます。片頭痛時は吐き気や薬の消化管吸収遅延がみられるため、制吐薬の併用もよく行われます。

トリプタン系薬剤は5種類ありそれぞれ半減期などの薬物動態が異なります。最も早く最高血中濃度に到達するスマトリプタン(イミグラン)は後述します群発頭痛でよく用いられ、頭痛の持続時間が長く再燃が多い月経時片頭痛では持続時間の長いナラトリプタン(アマージ)が良いとされます。薬効によってリザトリプタン(マクサルト)はストロングトリプタン、逆にナラトリプタン(アマージ)はマイルドトリプタンと分ける見方もありますが、薬理作用は共通しています。ある薬剤が効かない場合は別の薬剤に換えたりNSAIDsを併用することもありますが、トリプタンは適切なタイミング(頭痛の始まりかけ)に服用する必要があることから、飲み方の確認が必要です。いつも寝ている間に頭痛がおき目覚めたときは既に頭痛が進行しているという方は、トリプタンの適切な服用タイミングを逃してしまいがちです。この場合は、ラスミジタンコハク塩酸塩(レイボー)という、5-HT1Fを選択的に活性化して神経原性炎症や疼痛伝達を抑制する薬剤を使用することがあります。この薬剤は片頭痛が発生して1時間未満に服用した場合と1時間以降に服用した場合とで効果に差がないため、服薬タイミングが遅れてしまう方に有用と考えられます。ただめまいなどの副作用が出やすいため少量から試すことになります。

急性期治療を行う際は常に薬物乱用頭痛の出現に注意を払う必要があります。これは頭痛薬を頻回に服用することを3ヶ月以上続けることにより出現してくる頭痛で、原因薬剤の中止や次に述べる予防療法を用いることで治療します。

予防療法

予防療法は、頭痛発作が月に2回以上あるいは生活に支障をきたす頭痛が月に3日以上ある方で検討するよう推奨されています。予防療法を行うことで、頭痛の回数だけでなく症状の重さや持続時間を軽減し生活機能の向上や慢性片頭痛への進行を防ぐことが期待されます。ガイドラインでは、バルプロ酸、プロプラノロール、アミトリプチリン、ロメリジン、ベラパミルなどが候補にあげられています。漢方も用います。3-6ヶ月継続して頭痛が落ち着けば漸減を試みます。

近年CGRPの働きを抑える注射薬が発売されました。既存の予防療法では改善しない症例にも有効性が確認されています。ガルカネズマブ(エムガルティ)とフレマネズマブ(アジョビ)はCGRPに対する抗体です。エレヌマブ(アイモビーグ)はCGRPが結合する受容体をブロックします。

いずれも4週に1回の頻度で注射をしますが、フレマネズマブ(アジョビ)のみ12週間に1回の注射も可能です。2022年11月より上記3剤とも患者さん自身による自己注射が出来るようになりました。

投与には条件があり、

・医師に片頭痛と診断されていること

・片頭痛が過去3ヶ月の間で平均して1ヶ月に4日以上ある

・従来の予防薬の効果が不充分または副作用により内服継続が困難

・睡眠、食生活、ストレスマネジメントなどの指導を行っても日常生活に支障を来している

・18歳以上

となっています。

 

妊娠中や授乳中の方は、急性期治療としてはアセトアミノフェン(カロナール)が推奨されています。トリプタンの安全性は確立していませんが有害事象の増加の報告はないとされています。妊娠中は頭痛が軽減するため予防薬が必要なケースは減ると言われますが、使用する場合はプロプラノロールが選択肢として挙げられます。CGRP関連予防薬はよく検討した上で慎重投与となっています。使用を避ける薬剤としては、バルプロ酸、カルシウム拮抗薬(ロメリジン(ミグシス)、ベラパミル)が挙げられていますので、妊娠可能な女性の片頭痛にはこれらの薬剤は初めから処方を避けています。

発症当初は発作性片頭痛であったものが、年齢を重ねると共に発作頻度が増加する一方で軽症化し、緊張型頭痛様の症状が主体となる「慢性片頭痛」という病態もあります。慢性化因子として、頻回な発作、頭痛薬の使用過多、肥満、ストレス、睡眠時無呼吸症候群などが挙げられています(Headache 2008)。薬物乱用頭痛や緊張型頭痛との鑑別が必要ですが、慢性化した片頭痛にはできるだけ早期に片頭痛の予防治療を行うことが推奨されています。

緊張型頭痛

一次性頭痛の中で最も頻度が高く、生涯有病率は30-78%の範囲とされますが、原因は今だ分かってはいません。片頭痛とは裏返しの関係にあり、両側性の締めつけ感のある頭痛で、程度は軽度から中等度と片頭痛より軽く、階段昇降など日常の動作で増悪せず、吐き気を伴いません。不安障害などの合併が多く、個々の状態にあわせて鎮痛薬、抗うつ薬、筋弛緩薬などを組み合わせていきます。

診断にあたっては慢性硬膜下血腫などの二次性頭痛を鑑別することも重要です。

緊張型頭痛の治療

急性期には、アセトアミノフェン(カロナール)、ロキソプロフェン(ロキソニン)、ジクロフェナク(ボルタレン)、ナプロキセン(ナイキサン)などが推奨されていますが、筋弛緩薬が用いられることもあります。予防としてアミトリプチリン(トリプタノール)が高い有効性を示します。副作用を生じにくくするために少量から始めるのがポイントです。漢方では呉茱萸湯や釣藤散が用いられます。

群発頭痛(三叉神経・自律神経性頭痛:TACs)

TACsと呼ばれる頭痛の一群があります。共通した項目として、一側性頭痛(常に同じ側、眼窩部などが痛む)と、頭痛と同側の自律神経症状(結膜給血、流涙、鼻漏など)があります。TACsの中で圧倒的に頻度が高いものは群発頭痛です。

群発頭痛は、1年に1回、群発時期は1ヶ月間、頻度は1日に1回、1回の頭痛は1時間という、1にちなんだ特徴があります。発症年齢は20-40代で、男性は女性に比べて3-7倍この病気になりやすいと言われています。

原因としては、視床下部にgeneratorがある、三叉神経の興奮が脳幹部に入り反射弓を作って副交感神経系を活性化するなどの説があります。

出典:大塚製薬ホームページ

群発頭痛の治療

急性期治療としては、発作時間が15-180分と短いので最高血中濃度に到達する時間が短い、スマトリプタン(イミグラン)皮下注や点鼻薬が用いられます。また、純酸素7-10L/分をマスクで15-20分吸入することも有効で保険診療適応となっているため、酸素濃縮器を業者を通じて手配することもできます。

予防療法としては有効性が確認されているものが少なく、ベラパミル(ワソラン)が最大量240mg/日まで使用できますが、海外で有効とされている量(360mg/日)までは処方できません。

その他非常にまれですが、インドメタシンが著効する、発作性片側頭痛や持続性片側頭痛というものもあります。

その他の頭痛

頚性頭痛

二次性頭痛に分類されます。1983年に提唱された頭痛で、図のような特徴的な痛みの分布(頚部、前頭部など)があります。

頚椎や頚部軟部組織の疾患が原因で、後頭部からはじまり前頭部におよぶ片側性頭痛を呈します。片頭痛と異なり非拍動性です。頚をさわったり頭部を動かすことで頭痛が悪化します。慢性頭痛の15-20%の頻度という報告もあり実は頻度が高い可能性があります(Spine 2001)。上位の頚神経は脳神経である三叉神経と収束して複合体を形成しているため、頚神経刺激で三叉神経領域(前頭部や眼窩周囲など)の痛みを起こしたり、逆に片頭痛で三叉神経が刺激されることで肩や首が痛むこともあるというわけです。治療法は理学療法が第一選択で薬物治療に抵抗性とされており、負担のない範囲で調整することとなります。

薬物乱用頭痛

頭痛薬の使用過多で起こる頭痛で二次性頭痛に分類されます。3ヶ月を超えてトリプタンを1ヶ月に10日以上、単一の鎮痛薬を15日以上使用している場合に、月に15日以上の頻度で起こる頭痛で、乱用薬物の中止後2ヶ月以内に頭痛が消失します。従ってまず乱用薬物の中止し予防薬を併用しながら経過をみることになりますが、40%が再び薬物乱用をおこしてしまうとされます。日頃から鎮痛薬やトリプタンの使用が月に10回以上にならないよう管理することが重要視されており、きちんと頭痛ダイアリーを作成して状態を確認することと頭痛回数が多い方は予防療法の導入を積極的に検討していくことが大切です。

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