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過眠症

過眠症

日中の過度の眠気があり場合、次のように分けて原因を探っていきます。いずれも最初は睡眠日誌(Sleep-wake log)を記載していただき、実際にどのように睡眠をとっておられるか確認します。

a. 睡眠の量の不足:

眠気の原因を調べていくと、スリープヘルスの問題で明らかな睡眠時間不足があったということは少なくありませんが、必要な睡眠時間には個人差があり、7時間眠っても足りない方もいます。また、寝付こうとすると脚がむずむずしてきたり(むずむず脚症候群)、体がぴくついて目が覚めてしまう方もいらっしゃいます。問診やSleep-wake logを元に診断して診療を行います。

b. 睡眠の質の低下:

睡眠時無呼吸症候群の他、睡眠中に脚が勝手に動いて目がさめてしまう睡眠時周期性下肢運動異常症、睡眠中のてんかん発作などが原因となります。原因に応じて治療を行います。

c. 覚醒の維持の問題:

ナルコレプシーや特発性過眠症といった、いわゆる中枢性過眠症がここに分類されます。

ナルコレプシーは、Narco(睡眠)+lepsy(発作)という言葉で成り立っていますが、日中起きていないといけないときに寝てしまい、逆に夜はしばしば覚醒してしまう疾患で、過眠症の一つです。笑うと少しまぶたが下がったり、膝の力が軽く抜けるなど、カタプレキシーという症状が見られる場合があります。

特発性過眠症は、とにかく1日中眠たい疾患で、11時間寝てもまだ寝たりず仮眠をとってもすっきりしないという特徴があります。

診断には終夜睡眠ポリグラフィー(PSG)と睡眠潜時反復測定検査(MSLT)を組み合わせて行います。まずSleep-wake logをしっかり書いていだだき、特に検査の2週間以内はリズム良く十分な睡眠がとれている必要があります。睡眠時間が足りないと、検査で過眠症と誤って診断される恐れがあるからです。

PSGでの脳波所見から少なくとも6時間眠っていることを確認後(SASがあればCPAPを使用しながら記録)、翌朝に防音室でMSLTを行います。2時間おきに約20分間記録を4-5回行い、平均の睡眠潜時(眠るまでの時間)が8分以下だと過眠症の定義を満たすことになります。

2021年に発表されたアメリカ睡眠医学会(AASM)によるガイドラインでは、”院内で技師が確認しながらのPSG(常時監視PSG)を行った翌日にMSLTを行うべき”と記載されており、当院ではこの国際基準に則った方法で記録を行っています。

授業や実習中に寝てしまって学業を続けられなくなった方、大学は授業中少々眠ってもなんとか卒業できたが新人研修中に寝てしまって問題が顕在化して連れてこられる方などにしばしば出会ってきました。発症年齢は一般的に10代ですが、急に眠たくなることが自分の癖だと考えて50-60代になって受診してこられる方もおられました。薬剤治療にて眠気をコントロールできるようになり、復学を果たした方もおられましたし、無治療では人生を左右してしまう疾患とも言えますので、眠気が強い人を診察する時はこの疾患を念頭においておくことが重要です。

d. サーカディアンリズムの問題

スマホやゲームのやりすぎ、夏休みなどで夜更かしが続くと、通常の時間帯に眠ろうと思っても目が冴えて眠れず、睡眠時間不足になることがあります。これを睡眠相後退症候群(Delayed sleep phase syndrome:DSPS)といい、逆に高齢になって早い時間に眠ってしまい、真夜中に起きてしまって困るものを睡眠相前進症候群(ASPS)と言います。スリープヘルスの指導に加え、適切なタイミングにメラトニン受容体作動薬(ロゼレム)を使っていきます。ロゼレムは時差の治療にも使われます。

神経疾患によるもの

脳血管障害や多発性硬化症などの病気によって、睡眠覚醒に関与する視床・視床下部・脳幹などに病巣ができると眠気を来すことがあります。また、原因は完全には明らかにはなっていませんが、パーキンソン病などの神経疾患も眠気が問題となることがあります。

精神疾患によるもの

うつで眠気を起こすことがあります。強いうつ症状がある方は近隣の心療内科にご紹介いたします。

薬物によるもの

お薬手帳を確認させて頂きます。

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