頭痛
日本における頭痛の頻度と種類
日本人の頭痛有病率は、片頭痛が8.4%、緊張型頭痛が22.4%、その他の頭痛が8.9%となっており、40%弱の方が何らかの頭痛を経験しています。特に、繰り返す頭痛で外来を受診される方のうち84%が片頭痛であるという報告もあり、多くの方がこの症状に悩まされています。

頭痛は大きく分けて「一次性頭痛」と「二次性頭痛」に分類されます。代表的な一次性頭痛には、片頭痛・緊張型頭痛・群発頭痛(三叉神経・自律神経性頭痛)が含まれます。一方、二次性頭痛はくも膜下出血など特定の原因があって生じるものであり、特に注意が必要です。当院では二次性頭痛が疑われる場合、連携医療機関にてCTやMRI検査を依頼し、迅速な診断を行っています。
片頭痛の特徴と症状
片頭痛には以下のような特徴があります。典型的には頭の片側が脈を打つように痛みますが、約4割の方は両側性に痛みを感じます。症状が重い場合は、寝込んだり嘔吐したりすることもあります。
| 発症の傾向 | 女性に多く、10代で発症し30〜40代でピークを迎えることが多い。 |
|---|---|
| 遺伝的要因 | 家族に同様の症状を持つ方がいる(家族歴がある)場合が多い。 |
| 発作の頻度 | 月に数回程度、発作を繰り返す。 |
| 持続時間 | 一度発症すると、4時間から72時間持続する。 |

出典:大塚製薬ホームページ
また、頭痛が始まる数時間から2日前に、焦燥感、あくび、疲労感、首の凝りなどの予兆を感じることがあります。また「前兆のある片頭痛」では、視界に光のギザギザが現れる閃輝暗点(せんきあんてん)という症状が90%以上に見られます。
片頭痛が起こるメカニズム
かつては血管の収縮と拡張が原因とされていましたが、現在は三叉神経血管説が有力です。ストレスなどをきっかけに三叉神経からCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)などの物質が放出され、血管拡張や炎症が起こることで痛みが生じると考えられています。また、脳幹や視床下部が頭痛の発生源(ジェネレーター)として関与しているという説も提唱されています。

出典:大塚製薬ホームページ
片頭痛の治療法:急性期治療と予防療法
治療は大きく分けて、痛みが起きた時に抑える急性期治療と、頻度を減らすための予防療法の2軸で行います。
急性期治療:痛みを素早く抑える
軽度から中等度の痛みには、NSAIDs(鎮痛薬)と制吐薬を併用します。重度の痛みや鎮痛薬が効かない場合には、トリプタン系薬剤が推奨されます。近年は経口CGRP受容体拮抗薬を使用できるようになりました。
- ロキソプロフェン:血中濃度が上がるのが早く、即効性が期待できる。
- ナプロキセン:効果が長く続くため、持続時間の長い頭痛に適している。
- トリプタン:5種類あり、症状やタイミングに合わせて使い分けます。
- ラスミジタン(レイボー):飲むタイミングを選ばず、服薬が遅れても効果を発揮しやすい新しいお薬です。
- リメゲパント(ナルティーク):CGRP受容体拮抗作用をもつ内服薬で、こちらも服薬タイミングを選びません。

予防療法:頭痛の頻度と重症度を下げる
月に2回以上の発作がある、または生活に支障がある場合には予防療法を検討します。バルプロ酸や漢方薬などを使用し、3〜6ヶ月継続して様子を見ます。近年では、CGRPの働きを直接抑える注射薬が登場し、高い効果を上げています。

CGRP関連注射薬の投与条件
4週または12週に1回注射を行います。2022年より自己注射も可能になりました。以下の条件を満たす方が対象となります。
| 診断 | 医師に片頭痛と診断されていること |
|---|---|
| 頻度 | 過去3ヶ月間で平均して月に4日以上の発作がある |
| 既存薬 | 従来の予防薬の効果が不十分、または副作用で継続が困難 |
| 年齢 | 18歳以上 |

CGRP関連内服薬
急性期治療時にも使用されるリメゲパント(ナルティーク)とその後に上市されたアトゲパント(アクイプタ)は、いずれもCGRP受容体に結合してCGRPの結合を阻害することで効果を示します。CGRP関連注射薬が合わなかったり注射に抵抗がある方が良い適応です。
出典:ファイザー社資料
妊娠中・授乳中の方の治療
妊娠中や授乳中の方は、アセトアミノフェンが第一選択として推奨されます。予防薬が必要な場合は、プロプラノロールが検討されます。一方で、バルプロ酸や一部のカルシウム拮抗薬は避けるべきとされており、当院では将来の妊娠の可能性も考慮して処方を選定しています。
緊張型頭痛:最も頻度の高い頭痛
一次性頭痛の中で最も多く、頭の両側を締め付けられるような痛みが特徴です。片頭痛と異なり、吐き気や動作による悪化はありません。不安やストレスが関与していることも多く、鎮痛薬や筋弛緩薬、抗うつ薬などを組み合わせて治療します。
緊張型頭痛の治療
急性期にはロキソプロフェンやアセトアミノフェンを使用します。予防には、副作用を抑えるため少量のアミトリプチリンから開始するのが効果的です。また、呉茱萸湯(ごしゅゆとう)などの漢方薬も有効です。
群発頭痛:耐え難い激痛を伴う症状
一定の期間(群発期)、毎日決まった時間に眼の奥をえぐるような激痛が起こります。男性に多く、鼻水や涙が出るなどの自律神経症状を伴うのが特徴です。

出典:大塚製薬ホームページ
群発頭痛の治療法
発作時間が短いため、即効性のあるスマトリプタンの皮下注射や点鼻薬を用います。また、医療用酸素を吸入する純酸素吸入療法も有効で、保険適用での在宅手配が可能です。予防にはベラパミルなどが使用されます。
見逃してはいけないその他の頭痛
頚性頭痛(けいせいずつう)
首の骨(頚椎)や周辺の筋肉の異常が原因で起こる、二次性頭痛の一種です。首から後頭部、前頭部にかけて片側に痛みが生じます。首を動かすことで悪化するのが特徴で、第一選択の治療法は薬物療法よりも理学療法(リハビリ)となります。

薬物乱用頭痛:薬の飲み過ぎに注意
鎮痛薬やトリプタンを月に10日〜15日以上使用し続けることで、逆に頭痛が慢性化してしまう状態です。治療には原因薬の中止が必要ですが、再発しやすいため予防療法の導入が不可欠です。ご自身の状態を客観的に把握するために、頭痛ダイアリーを活用して管理することをお勧めします。

