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アルツハイマー病新薬

[2023.08.23]

2023年8月22日の新聞の1面に、アルツハイマー病の新薬であるレカネマブが本邦で承認されたというニュースが載りました。

脳内に蓄積したアミロイドβ(Aβ)が神経原線維変化を引き起こし神経細胞死に至るという「アミロイド仮説」という学説があります。Aβの凝集体は老人斑とよばれ、アミロイドPETなどの所見からアルツハイマー病発症の20年前から蓄積が始まるとされ、最も早期の病変と言われています。従ってこのAβの凝集を抑制できればアルツハイマー病の治療になるのではないかと考えられ、世界で研究されてきましたがなかなか成功しませんでした。今回承認されたレカネマブはAβに結合し除去する抗体薬です。治験の結果がまとめられた論文(van Dyck CH, NEJM 2013)について簡単にご紹介します。

被験者は50-90歳のアルツハイマー病による軽度認知障害(MCI)または軽度のアルツハイマー病関連の認知症患者で、アミロイドPETまたは髄液検査でアミロイドが確認された方です。1,795例が対象となり、898例がレカネマブ、897例がプラセボの投与を受けました。

結果としては投与後18ヶ月の時点で主要目標であるCDR(臨床認知症評価尺度)がプラセボに比べ27%改善しており(下図左)、下図右のようにアミロイドは減少していました。

従って治癒させるのではなく進行を遅らせることができる薬と考えられます。

金沢大学の広報(https://www.kanazawa-u.ac.jp/rd/123581)には、Aβの凝集体にレカネマブが結合している様子がのっています。下の右図でオンレンジのAβ凝集体(プロトフィブリル)を覆っている水色の部分がレカネマブです。

今後薬価が定まっていくでしょうが恐らくかなり高いと予想されます。長期間での効果がどうなるかまだ分からないことや、12.6%に脳浮腫などが出現しており、改良が必要な点もあります。

ただ、今後もMCIや認知症の初期段階で治療をするという流れが続いていきそうで、進行する前の段階を見つけ出すことの重要性が増してきているように思います。

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