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第14回日本臨床睡眠医学会学術集会に参加して

[2023.10.12]

6月の日本神経学会中四国地方会に続いて今年2度目の現地参加でした。

この学会の演題は臨床に即した内容を意識して組まれており、非常に勉強になりました。

 

モーニングセミナーでは秋田大名誉教授である清水徹男先生の研究のお話がありました。

筋交感神経活動(MSNA)は、筋肉内の抵抗血管の収縮を司る交感神経の節後遠位繊維の活動で、これを記録することによりヒトの交感神経活動をリアルタイムで評価することができます。

睡眠段階が深くなるにつれてMSNAは低下しますがREM睡眠期のときは覚醒時にように活発に活動します。

寝ているときに急に電話が鳴ったりして覚醒すると、MSNAが増加し血圧が急上昇する様子が示されており、夜間当直中にコールで起こされるのは結構心臓に負担がかかっているようだとおっしゃっておられました。

研究の様子の写真を診ましたが、寝ている患者さんの脚の下に潜り込んで記録している様子の写真が提示され、かなり大変な研究のようでした。

 

続いての特別講演では、ブリティッシュコロンビア大学のFernanda Almedia教授のマウスピース(Oral appliance)の話でした。

睡眠歯科領域ではとても有名な方で、睡眠を研究している日本の歯科医がこぞって留学されるそうです。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)では重症になるとマウスピースでは効果不十分でCPAPの適応となりますが、マスクが苦手な方は使い方はCPAPの使用率が低くなったり使用時間が短くなってしまいます。一方マウスピースはCPAPより使用率が高いことが報告されています。

そこでしんどくてCPAPを使わないときはマウスピースを使うことで未治療の時間を減らそうという考えがあります。

マウスピースは無呼吸低呼吸指数(AHI)を改善させる効果はCPAPよりは低いものの、眠気を減らしたり血圧を下げる効果はCPAPと同等というデータもあり、なかなか侮れないなという印象でした。

マウスピースは様々な種類があり、毎週勉強している海外の教科書で学んだので、いずれまとめたいと思います。

 

教育プログラムでは東北大学准教授の神先生がご講演されました。

神先生はてんかんと睡眠を専門とされておられることから正に私の知りたい知識を与えてくれる先生で、その穏やかなお人柄もあってとても話しやすく大変お世話になっております。

今回のご講演では、脳波検査で見えるてんかん性異常が終夜睡眠ポリグラフィ(PSG)ではどのように見えるかという実験結果を示されました。専門的な話になりますが脳波検査とPSGとではフィルタが異なり速い波はPSGのフィルタ条件ではカットされてしまうため、理論上てんかん性の棘波が見えにくくなります。ただ、結果を見てみますと割とPSGでも棘波が分かりましたので、てんかんが疑われる方にある程度PSGは有用のように感じました。

当院は普通の通常のPSGより電極を増やしててんかん性異常の検出に努めていますので、今後見つかるケースが出てくるかもしれません。ただてんかんの事前確率が高いようであれば、通常脳波や長時間ビデオモニタリング脳波を検討すべきと考えおり、神先生も同じご意見でした。

 

その他書き切れないくらいいろいろと学ぶべきことがありました。地方都市の広島から学会が開かれる大都市への現地参加は何かと大変ですが、直接演者に質問もしやすかったですし、やはりWeb参加より現地の方が勉強になるなとあらためて認識しました。次は12月に私の発表が福岡であり、大変申し訳ございませんが私の外来は休診とさせていただきます。ただきっと皆さまに還元できるような知識が得られることと思っています。

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