パーキンソン病と睡眠の問題
2月上旬に広島で、パーキンソン病における睡眠問題についてお話させていただく機会をいただきました。
パーキンソン病は、不眠と日中の眠気の両方を来しうる疾患です。
これら二つには双方向性の関係があり、例えば不眠があれば日中眠くなり、日中長時間寝てしまうと夜間入眠しにくくなってしまいます。
眠気については、覚醒維持に関係している神経伝達物質を産生する神経細胞の変性脱落や、深い睡眠を示す徐波活動が残ってしまうことが原因の一つという説があります。また、夜間頻尿や薬の影響で眠くなることもあり、原因毎に対処が必要です。
パーキンソン病では睡眠リズムが崩れやすいということも言われています。我々がもっている体内時計は網膜から入ってくる光に同調して地球環境(24時間/日)に合わせているのですが、動作が減って外に出て光を浴びる機会が減少することや、網膜の光感受性細胞が脱落したりリズムに関係する視交叉上核や松果体が変性することにより、リズムがずれやすくなると考えられています。リズム障害に対応するには、何よりもまず睡眠のご様子を尋ねて困っていないかを確認することが重要です。睡眠の習慣に問題があれば是正するようアドバイスを行います。
またレム睡眠行動異常症(RBD)という夢内容に応じて声がでたり体が動く症状が、パーキンソン病の50%に見られると言われています。RBDはパーキンソン病やレビー小体型認知症の前駆症状として注目されています。この発表では、院内での精密検査(常時監視終夜睡眠ポリグラフィ:PSG)で確かめてみると、RBDと思われた症状が実は睡眠時無呼吸症候群で苦しくて覚醒した時の様子だと分かったという実例をださせていただきました。このケースを通して、睡眠検査のゴールドスタンダードであるPSGを行わないと、睡眠中に何が生じているかは正確には分からないということを強調いたしました。
当院のPSGは睡眠技士が一晩監視して行うため精度が高く、異常な行動があればカメラを操作して記録に残しやすくしたり電極外れなどにも対応することができます。
もし診断や対応に苦慮するケースがありましたらご紹介いただけましたら幸甚です。