メニュー

執筆記事が出版されました

[2024.06.02]

先月、私(院長)が一部の執筆を担当した医学雑誌「メディチーナ」が医学書院から発刊されました。

 

スタンフォード大学睡眠医学部門の河合真先生が中心となって作られたもので、河合先生は私の師匠の立花直子先生(関西電力病院)の作られた日本睡眠医学会に所属しておられます。ほとんどの執筆者は学会の関係で良く存じている方で、お顔を思い浮かべながらゆっくり読み進めています。

 

本の最初の章では、まずどのような問診をするかということが述べられていました。「眠れない」または「眠い」という患者さんの悩みの要因は複数の因子が関係していることも多く、問診のポイントや必要な検査がまとめられていました。きちんと問診をするとそれなりに時間を要すため正直手間がかかるのですが、聞き取った内容によって診療方針が決まっていきますので重要なところです。睡眠日誌(Sleep-wake log)を書いてもらうことも大事で、それによって睡眠時間不足症候群や睡眠・覚醒相後退障害などの診断がつくだけでなく、治療にも用いることができます(行動療法)。

 

私は、「内科疾患と睡眠関連疾患」という題目で執筆しました。主な内容としましては、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)が、メジャーな内科疾患である、高血圧症、糖尿病、慢性腎臓病と関係があること、また夜間の突然死とも関係があることを、文献を引用しつつ自分の意見を入れて解説しました。本邦には中等症以上のOSASの患者さんが約940万人もいるとされており、これらの内科疾患があっていびきや無呼吸を指摘されている方は是非積極的に検査・治療を受けられてはいかがでしょうか。

また、小児のレストレスレッグズ症候群(通称むずむず脚症候群)の治療経験も記しました。特に小児は症状が出るのが脚とは限らず、“むずむず”という感じ方とは違うことも多いので(これは成人もですが)、医師が診断にたどり着くまでに時間を要することがあり注意が必要です。

 

ざっと目を通した中だけでも面白い記事は沢山あったのですが、脳神経内科医として特に興味を引いたのは、京都大学の江川斉宏先生の担当記事です。「AD(アルツハイマー型認知症)患者は眠らない!」というタイトルで、どうしてAD患者さんが眠れなくなるのか、この問題にどうアプローチするかがクリアに述べられており、とてもお勉強になりました。また、九州大学の津田緩子先生のOSAS患者さんの口の中やマウスピースのお話し、河合真先生のウェアラブル(睡眠アプリ)についての解説も興味深かったです。

 

最後に、京都大学の紀戸恵介先生が問題提起された「睡眠障害」という用語について触れさせて下さい。英語のSleep disorderをそのまま訳したのが「睡眠障害」という用語ですが、文脈によって不眠または逆に過眠を指していたり(症状)、睡眠時無呼吸症候群などの睡眠関連疾患を指していたり(疾患)、夜間せん妄などの状態(その他)を指していたりと、何を意味しているのか曖昧で混乱を生みかねないものになっています。ここからは私の意見ですが、「脳血管障害(脳卒中)」という用語は、脳出血(血管が破れて血が出る)も脳梗塞(血管が詰まる)も含みますが、これらには共通の基礎疾患として高血圧症があるため、やや強引な見方をすれば同じ方向を向いている疾患と感じることができます。一方、睡眠の疾患は、過眠症と不眠症とでは原因も治療も全く異なっています。問診票に時々「睡眠障害だと思うので診て欲しい」と書かれていることがありますが、これでは何を意味しているのかが分かりません。患者さんがこの用語を使うのは仕方が無い点があるとしても、医療従事者ならば避けて欲しいものです。

 

待合にこの本を1冊置いてありますので、興味のある方はご覧下さい。

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME