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頭痛専門医試験

[2024.09.29]

脳神経内科医の道を歩み始めてから必然的に頭痛診療に携わってきたものの、他の資格取得や講演会準備などで忙しく頭痛専門医資格は取らないで過ごしてきました。

ただ日本頭痛学会に入会してから17年も経っていたことと、臨床の現場で片頭痛に対するCGRP関連製剤の劇的な効果を目の当たりにしたことから、あらためて頭痛診療の経験をまとめるきっかけにしようと思い、頭痛専門医試験を受けてみることにいたしました。

これまで受けてきた複数の専門医試験と比較して、頭痛専門医試験では六法全書さながらの細かい分類を頭にたたき込まないといけないことが特徴でした。最新の国際頭痛分類第三版の冒頭に、”その都度分類を参照すれば良いので覚え込まなくてもよい”という旨の記載がありますが、試験となるとそうはいきません。

今回勉強していて面白かったのは、「睡眠時頭痛」と「睡眠時無呼吸性頭痛」の存在についてです。

睡眠時頭痛は”その他の一次性頭痛”に分類されており、通常50歳以降で発症する、月に10日以上3ヶ月を超えて睡眠中にのみ繰り返しおこる頭痛で、覚醒の原因になります。主に両側性で軽度から中等度の痛みであり、従来は緊張型頭痛様とされていましたが、吐き気を伴ったりと片頭痛様の特徴を持つものもあるようです。持続時間は起床後15分から4時間まで継続すると定義されています。診断には睡眠中におこる他の頭痛を除外する必要があり、その代表例が睡眠時無呼吸性頭痛です。

睡眠時無呼吸性頭痛は”ホメオスターシス障害による頭痛”に分類されていて、高山性頭痛や飛行機頭痛(これもなかなか興味深い頭痛です)の仲間として扱われています。この頭痛は無呼吸低呼吸指数(AHI)が5回/時間以上の睡眠時無呼吸症候群(SAS)患者に生じ、SASの治療とともに改善するという特徴があります。1ヶ月に15日以上発現し、緊張型頭痛様で、覚醒後4時間まで持続すると定義されています。

この両者は違いがありながらもよく似ており、このようなことを一つ一つ覚えていく作業は地味に骨の折れるものでした。

さて、試験前日の金曜夜、診療後に新幹線に飛び乗って東京に向かったのですが、神奈川県で地震が起きて新幹線が長時間動かなくなってしまい(被害が目立たなかったのは何よりでした)、東京駅についたのは夜中の1時でした。駅の外にはタクシー待ちの長い行列が出来ており、つかみ合いの喧嘩が発生するなどかなり殺伐とした状況となっていました。

タクシー待ちの行列

やっと順番が来て乗ったタクシーの運転手さんは優しい人で、試験で上京したことを伝えると降車間際に「頑張って下さい」と声をかけて下さいました。ホテルに着いたのは午前2時で、そこからなかなか寝付けず、およそ試験前とは思えないコンディションで翌朝を迎えました。

試験は、まだ発売されていない薬についても問われ、専門医試験にふさわしい難度でした。くたびれ切っていたため制限時間より早く試験会場を退出して帰りの新幹線に飛び乗り、動画でレカネマブの講習を受けながら帰広しました。

結果は、

お陰様で無事合格していました。

内科学と脳神経内科学という縦の糸に、頭痛・睡眠などの横の糸を通すことで見えてくるものがあり、有意義でした。

最後に、受験にあたり症例レポートの査読をして下さった先生方に感謝申し上げます。

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